Archive for 02 June 2008

02 June

すてきなお客様

そのお客様に初めて会ったのは、彼女がまだ小学校4年生でした。
特に上手な生徒ではなかったですが、
一生懸命な印象がありました。
使っていたエレクトーンは初級モデルでしたので、
レッスンの中では子供ながらに物足りなさを感じて
いたのは事実でした。
そこでご両親にお話をして、お買い換えをお勧めしたところ
『とても買い換えはできない』と。。
我々の仕事は断られてから始まりという部分があります。
事あるごとに様々なご案内をさせていただきました。
お母様の理解は得ることができましたが、
お父様の理解は得ることができず・・
これもよくあるパターン。
お父様に理解していただきたく様々な企画にご招待しました。
が、
それでも理解はしてもらえず・・・
そんなこんな月日が経ち彼女も中学2年生になりました。
演奏レベルも数段上がって、とても今、自宅にあるエレクトーンでは話にならない状況。
でも、子供ながらにも色んな事が考えられる中学生。
お金がかかることも理解が出来る。
だから親には『欲しい』とは言えない。
我慢していました。
そのころ私たち営業サイドも半ばあきらめムードになっていて、
そのお客様の名前はすっかり忘れていました。
そしていつしか受験となり、彼女は一時教室をやめました。

無事、高校に合格し教室に彼女は戻ってきました。
でも、相変わらずエレクトーンはあの時のまま・・・
ところが、先日、彼女を担当する講師から私に電話がありました。
『○○さん、エレクトーン購入したいそうです。』
すっかり忘れていたお客様でしたので、
正直かなりびっくりしました。
そしてもっとびっくりしたのは講師が次に話した一言。
『○○さん、自分でバイトしてお金を貯めたそうです。
某ファーストフード店で学校が休みの日の
土、日の朝5:00〜お昼ぐらいまで。
それでもまだエレクトーンの代金の半分ぐらいなんですが、
例えばローンとかの相談にのってあげてもらえますか?』
半分の金額と言っても彼女が購入をしようと
しているエレクトーンは定価で693000円。約70万円。
の半額だから35万円。
高校生で35万円を貯めたんですよ。コツコツと。

でも、高校生の彼女がローンを組むことはできません。
絶対に親の協力が必要です。
講師から電話をもらったその直後に私は
親御さんに電話をしました。
もちろん『協力』をしてもらうためです。
アポを取り、伺っていろいろな話をしました。
親御さんも、娘さんのがんばりを評価して
残りの半額は費用を負担してあげる
と言ってくれました。
そして契約。納品。

契約時に彼女はいませんでしたが、納品の時に会えました。
『バイト、頑張ったね』と私が言うと
『はい。本当にエレクトーンが好きなので』と
とてもにこやかに笑っていました。

とかく甘えきったこんな時代に、
自分で好きなことをするために努力をする。
とてもすてきな生徒であり、お客様です。

彼女は、きっとこのエレクトーンを大事に使い、
またレベルもUPすることでしょう。

彼女はこの夏、念願だったエレクトーンの
コンクールに挑戦をします。

23:42:39 | ashigara | |