Complete text -- "すてきなお客様"

02 June

すてきなお客様

そのお客様に初めて会ったのは、彼女がまだ小学校4年生でした。
特に上手な生徒ではなかったですが、
一生懸命な印象がありました。
使っていたエレクトーンは初級モデルでしたので、
レッスンの中では子供ながらに物足りなさを感じて
いたのは事実でした。
そこでご両親にお話をして、お買い換えをお勧めしたところ
『とても買い換えはできない』と。。
我々の仕事は断られてから始まりという部分があります。
事あるごとに様々なご案内をさせていただきました。
お母様の理解は得ることができましたが、
お父様の理解は得ることができず・・
これもよくあるパターン。
お父様に理解していただきたく様々な企画にご招待しました。
が、
それでも理解はしてもらえず・・・
そんなこんな月日が経ち彼女も中学2年生になりました。
演奏レベルも数段上がって、とても今、自宅にあるエレクトーンでは話にならない状況。
でも、子供ながらにも色んな事が考えられる中学生。
お金がかかることも理解が出来る。
だから親には『欲しい』とは言えない。
我慢していました。
そのころ私たち営業サイドも半ばあきらめムードになっていて、
そのお客様の名前はすっかり忘れていました。
そしていつしか受験となり、彼女は一時教室をやめました。

無事、高校に合格し教室に彼女は戻ってきました。
でも、相変わらずエレクトーンはあの時のまま・・・
ところが、先日、彼女を担当する講師から私に電話がありました。
『○○さん、エレクトーン購入したいそうです。』
すっかり忘れていたお客様でしたので、
正直かなりびっくりしました。
そしてもっとびっくりしたのは講師が次に話した一言。
『○○さん、自分でバイトしてお金を貯めたそうです。
某ファーストフード店で学校が休みの日の
土、日の朝5:00〜お昼ぐらいまで。
それでもまだエレクトーンの代金の半分ぐらいなんですが、
例えばローンとかの相談にのってあげてもらえますか?』
半分の金額と言っても彼女が購入をしようと
しているエレクトーンは定価で693000円。約70万円。
の半額だから35万円。
高校生で35万円を貯めたんですよ。コツコツと。

でも、高校生の彼女がローンを組むことはできません。
絶対に親の協力が必要です。
講師から電話をもらったその直後に私は
親御さんに電話をしました。
もちろん『協力』をしてもらうためです。
アポを取り、伺っていろいろな話をしました。
親御さんも、娘さんのがんばりを評価して
残りの半額は費用を負担してあげる
と言ってくれました。
そして契約。納品。

契約時に彼女はいませんでしたが、納品の時に会えました。
『バイト、頑張ったね』と私が言うと
『はい。本当にエレクトーンが好きなので』と
とてもにこやかに笑っていました。

とかく甘えきったこんな時代に、
自分で好きなことをするために努力をする。
とてもすてきな生徒であり、お客様です。

彼女は、きっとこのエレクトーンを大事に使い、
またレベルもUPすることでしょう。

彼女はこの夏、念願だったエレクトーンの
コンクールに挑戦をします。

23:42:39 | ashigara | |
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